最近よく耳にする「見える化」と「IoT」というワード。IoTを活用した見える化は、今後ビジネスにおいて重要な役割を担うと期待されており、工場へ導入する企業も増加しつつあります。しかし、IoTの見える化にはどのようなメリットがあるのでしょうか。本記事では、IoT導入で工場を見える化した場合のメリットや課題について解説します。

 

工場の「見える化」とは

見える化とは、在庫数や生産ライン、品質といったデータを収集して視覚的に分かりやすくする仕組みのことです。これまで目で見て確認できなかった情報を、可視化できることが大きな強みといえるでしょう。

また、今まで以上に情報を正確に把握できるため、発注ミスや納期遅れといったトラブルを未然に防げます。トラブル回避だけでなく、生産プロセスにおけるデータ収集は営業利益の増加にも貢献してくれるのです。ゆえに、工場では「見える化」が重要なテーマとして上げられるようになり、様々な企業が意欲的に取り組みを行っています。

 

IoT導入によって見える化を最短で実現

見える化を実現するためには、様々な観点からデータを集める作業が必要です。従来のデータ収集は、PCやハンディターミナルなどを使って人の手で行うことが主流でした。しかし、この方法では膨大な工数と時間がかかってしまいます。加えて、記録からデータ集約まで全て人間が行っているため、入力された情報が正確とは言い切れません。

これらの問題を解決し、効率的なデータ収集を可能にしたのがIoTです。IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」とも呼ばれ、身の回りのモノがインターネットを介して人間と繋がることを指しています。このIoTを導入した工場は「スマート工場」「スマートファクトリー」とも呼ばれます。

IoT最大の強みは、リアルタイムでデータを収集・分析して、最短で見える化を実現できることでしょう。見える化を実現できれば業務効率の向上が期待できるため、ここ数年さまざまな分野で導入が進められています。とくに工場では「見える化=IoT導入」とされるほど、重要な存在になっているのです。

工場においては機械・生産ラインにインターネットを繋ぎ、生産数や作業工数、品質などのデータを収集。集めたデータはIoTシステムに統括されるため管理がしやすくなり、人の手による記録や集約といった手間を省けます。また、IoT導入によって機械と機械、人と機械を連携させることによって、工場全体の効率化や品質の安定化などを図りやすくなります。

 

IoTの見える化で得られるメリット

工場にIoTを導入し、見える化を進めることで以下のようなメリットが得られます。

 

メリット①生産性の向上

IoT導入によって設備を常時監視できるようになり、振動や温度といったデータから設備停止の可能性も感知できます。完全停止する前にメンテナンスを行えるため、生産ラインが突発的にストップすることもありません。その結果、無駄なコストが発生せず、高い生産性をキープできるのです。

もう1つ、生産進捗をリアルタイムで把握できることもメリットとして挙げられます。データを基に担当者がスケジュール・目標を再設定することによって、業務の効率化や生産性向上が見込めるのです。

 

メリット②コスト削減

前途した通り、IoTの予知保全で設備の不具合を事前に感知できるため、設備トラブルによる不良品の数が減少します。不良品が作られてしまう原因の分析および改善も可能になり、結果としてコスト削減が叶います。

また、IoTが自動でデータ収集を行ってくれるため、これまで人の手で行っていた生産日報や検査記録といった作業も不要に。記録を行っていた人員や時間を生産作業へ回せる上に、紙やペンといった備品購入費用もカットできるのです。つまり、コスト削減と同時に企業利益の向上が見込めます。

 

メリット③品質の安定化

IoTを導入することによって、詳細な製造情報をデータ化して蓄積できます。蓄積した情報を分析すると、機能性の向上や不良品を出さない製造パターンなどを導き出すことが可能です。さらに、従業員が持つ知識をデータ化することで技能やノウハウを全員で共有でき、結果として品質の安定化に繋げられます。

 

IoT導入における課題とは

業務効率や生産性の向上といった大きなメリットが得られるにも関わらず、IoTを導入している企業は多くありません。公益社団法人 日本経済研究センターの調査によれば、日本ではまだ14~15%ほどの企業しか取り入れていないのです。導入率から見るに日本は2020年以降、欧米企業から大きな遅れを取ってしまうでしょう。

では、なぜここまでIoT導入が進まないのでしょうか。総務省の調査によれば、多くの企業がセキュリティ面を懸念事項として挙げています。「ネットワークに接続されたモノが第三者に乗っ取られる」「リアルデータやプライバシー情報の保管」といった部分が課題になっており、IoT導入は足踏み状態に。

確かに企業の懸念通り、世界ではIoT機器を対象としたサイバー攻撃が複数発生しています。Amazonなど大手サイトのサービスがダウンしたこともあり、導入に対して不安を抱くのも当然でしょう。

また、IoTは接続する機器が多いだけに、これまで以上の脅威があると危険視されています。不正アクセスやデータ盗用のリスクが高いことに加えて、近年サイバー攻撃の手口が巧妙かつ悪質化。従来のようにファイヤーウォールやウィルス対策ソフトによって、解決することが困難になっているのです。

それだけでなく、ソフトウェアを更新していない・初期設定のまま放置しているといったユーザーのリテラシー不足も顕著化。IoTの脆弱性に付け込んだ攻撃を助長する要因となっています。

この課題を解決するため、政府は「IoTセキュリティガイドライン」を策定。IoT導入に伴って取り組むべき事項の認識や、適切なセキュリティ対策の検討を促進しています。IoTを導入する際はガイドラインを参考にITリテラシーを向上させ、セキュリティ面を強化させましょう。

 

まとめ

工場にIoTを導入して見える化を進めることにより、生産性の向上やコスト削減といったメリットが得られます。ここ最近は通信技術が目覚ましい発達を遂げているため、今後はIoTを活用したスマート工場がより一層増加することでしょう。IoT導入に遅れを取れば、ライバル企業と売上に差がつくことも考えられます。しかし、今すぐIoT導入を進めればいいというわけではありません。セキュリティ面の課題をいかにして解決するか検討した上で、導入を進めることが大切です。