2020年現在、ネットワークにモノを接続して得られる情報を活用する技術「IoT(Internet of Things)」の研究開発が急速に進んでいます。新たな価値やサービスを見出すこの技術は、様々な分野で利用されています。研究開発にともない進むビジネスでの適用により、IoTに関する特許の出願、登録も少なくありません。特許が最も多い業種はサービス業です。HOME安堵ビルディング用、ヘルスケア用、運輸用などがこれに続きます。その他、様々な分野でIoTの活用が今後期待されています。そこで、IoTにまつわる関連技術と特許について紹介します。

 

ビジネスモデルとしてのIoT特許

ビジネス関連発明の活用に注目が集まっているのが、第四次産業革命を推し進めているIoTやAI分野などの新たな技術です。

IoTを活用したビジネスモデルの確立には、IoTを利用して分析したデータから新たなデータを生み出し、何らかのサービスへの活用が必要です。

ビジネス関連発明の特許として自社ビジネスモデルで使用する際、システムを保護できる場合があります。

IoT関連技術の特許はシステム保護に重要な役割を果たします。国内のビジネスカイン連発明の特許出願数は、2012年以降増加し、2017年には9,100の出願がありました。

「モノ」から「コト」への産業構造の変化の進行がこの兆候の背景にあります。近年の特許の出願動向として分野別にみてみると、サービス業、EC・マーケティング、管理・経営が上位3分野です。また、上位3分野に続き、出願件数が増加しているのが金融、ヘルスケアの分野です。

IoT関連の特許出願のうち、約4割がビジネス関連発明となっています。この兆候は、自社のビジネスモデルが進歩的であるという信用補完の面と、協業の意思決定を後押しする新たな協業ヒントのきっかけという協業促進の面があります。

このビジネス関連発明の新たな活用は、日本の特許権だけで海外でも同様の利用、活用が可能です。

IoTビジネスに参入する企業は今後、それぞれの業種に応じた特許戦略をとっていくことが重要になります。

 

 

AIとIoTの分類

IoTと人工知能(AI)の技術革新は大量のデータとAIを活用することによる、第四次産業革命の実現を期待されています。

新たな技術として脚光を浴びるAIとIoTの活用ですが、2つを分類する方法は様々です。

まず、AIとは知能のある機械のことを指します。これは大きく2つに分けられます。1つは「人間の知能そのものをもつ機械」、もう1つが「人間が知能を用いてすることをする機械」です。現在の技術では人間の知能そのものを持つ機械を作るAIの実現は難しいため、実際に研究されているのは人間が知能を用いてすることをさせるための機械の開発です。

IoT関連技術の分類に関しては特許庁でも、近年の活用増加を見込み知的財産権のシステムの適切な整備を進めています。これにより、2016年の11月より、横断的な分類である広域ファセット分類記号「ZIT」を新設。日本の特許文献に対して付与を行うことを特許庁は決めました。

2020年1月からは国際特許分類の改正が決まっており、IoT関連技術に関しては新たにIPCサブクラスG16Yが発効します。

G16Yは「コンピュータや電話機を除いた汎用の計算機、通信機器を除いたモノ」、「インターネットに直接、間接的に接続するネットワーク」、「監視、制御を除いた収集したデータの処理や出力が可能な新たな価値・サービスの創造」という限定された範囲になります。

 

IoT関連技術の特許の審査基準とは

特許は特許法で規定されている要件を満たした場合でなければ取得できません。IoT関連技術の特許取得についても同じです。

特許を取得できる発明とは、特許法上で発明と説明できる必要があります。発明とは、特許法第2条第1項で「自然法則を利用した技術的思想の捜索のうち、高度なもの」と定められています。

IoT関連技術においての審査基準は「発明該当性」「新規性」「進歩性」です。

発明該当性では、自然法則を利用していないものでは発明には該当せず、保護対象となりません。

新規制では、ネットワークで接続した複数の端末などのシステムの一部が、特許出願される場合があります。

進歩性は基本的に、コンピューターソフトウェア関連発明の審査基準と同等です。

 

IoTの特許技術などに関する事例

特許庁では2016年9月と2018年3月に、IoT関連技術の発明についての審査基準に関する事例を追加しています。

事例は審査基準である「発明該当性」「新規性」「進歩性」に基づいたものです。

発明性に関する事例の一つが、無人走行車の配車システムです。これは、配車希望者の携帯端末と配車サーバー、無人走行車からなるシステムに関する事例です。発明の概要としては、歯医者サーバーがユーザーIDと顔画像を紐づけて記憶し、ユーザーからの配車要求に応じ、配車状況により配車可能な無人走行車を決定し、無人走行車にユーザーの顔画像とユーザーの位置を通知、その後に無人走行車が配車位置まで行き、事前に共有された顔画像からユーザーを探し出すシステムです。この事例のIoT関連技術に該当する箇所としては、無人走行車が配車位置や顔画像を受信処理です。

新規性に関する事例は、ロボット装置です。この発明は作業対象となる物体を検出し、物体に関するデータをサーバーに送信し、サーバーから回答を受信、回答に応じた制御をロボット装置に行う発明になります。ロボット装置の発明のIoT関連技術に該当する箇所は、ロボット装置がサーバーに対し、質問を送信、サーバーからの回答を受信する処理です。

進歩性に関する事例としてあげられるのが商品管理方法です。この発明では、製品に関する需要をデータとして受信し、供給源を選択、さらに製品の仮予約をします。IoT関連技術に該当する箇所は、サーバーと供給元である向上や納入者と稼働状況、仮予約、データの送受信が当てはまります。

その他、様々な特許事例については特許庁が取りまとめた事例集に掲載されています。

 

まとめ

IoT関連技術はあらゆるモノとネットワークに接続され、あらゆるモノが大量のデータを取得、収集・管理が可能です。

新技術であるIoTやAIを活用することで、新たな価値やサービスを生み出すことが可能となった現在、IoT関連技術の特許取得の需要の更なる高まりが予想されます。今後、業種やビジネスモデルに応じた特許戦略が重要な課題になっていくことでしょう。