モノとモノとが繋がるIoT分野では、データを従来のクラウドで収集・処理するだけでなく、エッジ側でデータを処理するエッジコンピューターが注目され始めています。エッジコンピューターとは、ユーザーと近い範囲のネットワークにサーバを分散配置して処理するコンピューティングモデルのこと。データを遠方のデータセンターへ送信せず、デバイスに近い場所のサーバーやコンピュータで処理するため負荷を分散することができ、その分通信速度も速くなります。

IoTは前述した「エッジコンピューティング層」と、データを収集してネットワークに送る「デバイス層」、収集された膨大なデータを解析しアプリケーションを実行、再びモノへフィードバックする「クラウドコンピューター層」の3層からなっています。

本記事ではIoTの3層構造のうち、エッジコンピューティング層にあたるエッジ機器の活用についてご紹介します。

 

IoTの構成とデータ連携

IoTシステムを構築する際に、まず行わなければならないのがIoTの構成を理解すること。この構成要素を把握するために利用するのが、先にも挙げた「3層構造」です。IoTの構成を大きく分けると「デバイス」、「エッジ」、「クラウド」の3つに分類されます。

まず、デバイスでデータを収集しクラウド上にデータを送信します。そうして蓄積されたデータベースやファイルを分析、可視化するのがエッジコンピューターです。

この一連のやり取りの中で、全ての行動に「データのやりとり」が発生していることがわかります。つまりデバイスからクラウド、エッジまで一貫してデータ連携を行わなければIoTシステムは成り立たないということです。IoTは、いかにデータ収集・連携を実現するかが重要なポイントになります。

ではデータ収集・連携を効率よく行うためにはどうすればよいのか?まずはIoTアーキテクチャを利用しましょう。アーキテクチャとは、システムの企画や要望などを具体的に絵や図にしたもののことです。IoTシステムを構成する際、アーキテクチャが力強い道標となります。

 

エッジコンピューターの利用でコスト削減やセキュリティ強化

エッジコンピューター層は、リアルタイムでのデータのやり取りが重要になる装置や設備の制御、モニタリングに使用されます。このエッジコンピューターを上手く利用することで、クラウドコンピューター層に膨大なデータを送信する必要が無くなります。リアルタイムのデータ処理をクラウドを介さずにエッジコンピューターが担うので、通信量のコスト削減が可能になるのです。

また、データの生成が可能なエッジデバイスを利用することで、クラウドサービスが故障した場合でも影響を受けることなく、エッジ側だけでデータ処理ができるという利点もあります。

それだけではありません。エッジコンピューターはセキュリティ面から見てもメリットがあります。企業の情報など重要なデータが集中するクラウドは、外部からの攻撃による情報漏洩の恐れやデータの悪用などのリスクがつき纏います。一方エッジ側でデータを収集・処理をする場合はクラウド側にデータを転送する必要がないため、情報漏洩などのリスクを軽減することができます。

  

IoTのパッケージ化のメリット

エッジデバイスを採用した企業内の装置や設備などから様々なデータを収集し、分析することで不具合からアラート通知までをワンストップ・サービスで提供できるようになります。これを一つのパッケージとすることで事故や故障を未然に防げたり、生産性の向上が見込めたりします。

また、パッケージの利用による人件費削減も可能です。エッジデバイスから生産設備のデータを収集し、データを可視化。クラウド上で分析したデータ結果を元にした現場のデバイス制御機能など、IoTシステムが担っている機能をオールインワンで実装します。これにより、定期的に行う「予防保全」メンテナンスではなく、事前に異常が起こりそうな場合に対応が可能になる「予知保全」メンテナンスが可能です。これは人件費のみでなく、部品の交換費用の削減にもつながります。

 

IoTによる顧客価値とエッジコンピューター

エッジコンピューターはコストの削減やプライバシー保護の側面だけでなく、顧客価値を支えるという面も持ち合わせています。リアルタイムでのデータ処理やプライバシー保護を得意とするエッジコンピューター。これを特徴とするIoTプラットフォームを利用することで、オフィス向けではない顧客価値を生み出すことが可能です。

 

近年、都市化の進展に伴い、交通渋滞や治安悪化などの問題が多くあがっています。そのような課題を解決するため注目されているのが、本人確認や防犯カメラです。これらをストレスフリーに行うためには、リアルタイムで多くのデータを処理できる高い精度が必要になってきます。そこで活躍するのがエッジコンピューターです。

膨大なデータをクラウドと分散処理できるほか、データベースの連携や現場近くでの処理、高精度な認証が可能で、不審者を早期検出することができます。

エッジコンピューターは安全・安心で効果的な店舗運営やサービスの向上、またそれに不随する顧客価値の提供にまで活用できるのです。

顧客価値の提供で重要なのが、リアルタイムでの商品状況の把握と消費者の動向の把握です。現場では様々な機器への接続が重要になりますが、ここでエッジコンピューターを活用します。これは、消費者の行動をリアルタイムにとらえられ、適切なプロモーションを表示するリアルタイム販促を行うにあたってとても効果的です。このようにして顧客価値の提供を行うことで、結果的に売り上げ拡大にも繋がります。

また、業務設備や機器の稼働情報も同時にクラウドへ転送できるため、その稼働情報をもとに機器を制御し、節電や予防保全などに活用することもできます。

 

様々なメリットを持つエッジコンピューター

ここまでIoT3層構造の一つ、エッジコンピューター層についてご紹介してきました。エッジコンピューターを上手く活用することで、IoTのメリットは大きく変わっていきます。コスト削減、プライバシー保護、顧客価値の向上など、多種多様なIoTに即した活用方法は生産性の向上に繋がっていくため、ぜひ導入を検討してみてください。