ファナック株式会社によって開発された産業用プラットフォーム「FIELD system」。これを導入することにより、産業用ロボットは学習情報を複数台で共有でき、学習時間を短縮し、機械に取り付けられたセンサーの情報を解析、故障予知が可能になります。FIELD systemはスマートファクトリーの実現を推進しており、今後は5G活用の可能性も検討しています。製造業のさらなる生産性や効率化の工場を目指したプラットフォーム「FIELD system」について詳しくご紹介します。

日本初のIoT基盤「FIELD system」とは

FANUC Intelligent Edge Link & Drive systemFIELD system)は、ファナック株式会社が開発する産業用IoTプラットフォームです。

このプラットフォームの特徴は大きく5つあげられます。一つ目が多くの処理をFog以下で行い、ユーザーデータの処理および保存を自社運用で行えることです(Edge Heavy)。2つ目がプラットフォームのAPIを公開し、誰でもアプリ開発が可能なこと(Open Platform)。3つ目が世代やメーカーの枠を越えて機器を接続できること(connectivity)。4つ目が様々なアプリケーションとAIの活用(Application&AI)。最後がエッジ機器のコントロールです(Control)。これらの特徴をまとめて「つなぐ、見える、考える、動かす」が、FIELD systemの大きな特徴となっています。

FIELD systemは様々な工場で使用される機器などとネットワーク接続し、収集したデータを効率的に処理、活用することが可能です。また、これを使用したスマートファクトリーの実現を目指しています。

FIELD systemはオープンプラットフォームとして、開発者による自由なアプリケーションおよびデバイス用のコンバータの開発や販売が可能です。これにより、工場内で使用される機器はメーカーなどの枠を越えて接続可能となります。同時に、FIELD systemを利用してネットワーク接続することで工場内の機器や設備のデータを一括管理・共有を促せます。

人工知能(AI)とIoT技術を組み合わせることにより、分散型機械学習を可能に。さらにFIELD systemのアプリケーションやコンバータを利用することで、他社のセンサーやロボットなどの情報を収集できるため、上位システムとの融合や結合が容易にできます。

FIELD system」によるスマートファクトリー化の促進とは

産業用IoTの利用で重要となるのが、スマートファクトリーです。

工場内の複雑なシステムを制御するために、モノとモノを繋いで「見える化」し、活用するIoT(モノのインターネット)。FIELD systemは、IoTを活用したモノの自動制御によるスマートファクトリーの実現を目指しています。キーポイントは、より効率的に、高精度に、安全に動かすことなど、「動かす」です。

国内の大手自動車メーカーや工作機械メーカー、部品加工メーカーなどに、同システムの導入を進めており、現在は知能化工場を実現するためにラインやPoCからの本格的な導入を目指しています。

スマートファクトリー化に向けた取り組みの一つにあげられる自動化工場ですが、5G活用の可能性も検討予定です。5Gについては自社工場内での活用を検討しています。工場内を5Gネットワークで繋ぎ、機器や設備、センサーなどから収集したデータの見える化と活用を目指し、スマートファクトリーの実現に取り組んでいく予定です。また今後は、工場およびプラント内向けの5G対応ソリューションなどのサービスの検討も予定されています。

工場やプラント内では、無線通信で精密機械間の制御を一定の速度で処理することが求められます。安定した低遅延などの厳しい条件が予想される中で、5Gの活用は、顧客用ネットワークと産業向けのネットワークとの連携が課題です。また、これを実現するための適切なネットワーク環境の提供も課題としてあげられます。

今後は実証実験を行い、多くのノウハウを生み出すことで、製造現場での生産性や品質向上につながる活用が期待されています。

ファナックのFIELD systemの促進は、日本のモノづくりを呼び戻すためのスマートファクトリー化への第一歩とも言えるでしょう。

ファナックの産業用アプリとFIELD system Storeによる活発な外部開発

産業用IoTプラットフォーム「FIELD system」は、ファナックだけでなく、他社のアプリケーション開発会社やコンバータ開発者およびそのパートナーなど、様々な人がアプリケーションを自由に開発できます。

ファナックが運営するECサイト「FIELD system Store」では、FIELD Systemのフィールドシステムで開発したアプリなどのオンライン販売が可能です。

ストアで気になるアプリケーションがあれば、アイコンをクリックし、詳細画面を確認するだけで購入できます。

このサイトではファナックのアプリがストア内に並んでいましたが、NTTデータがサードパーティとして初めてデータトランスローダーという基盤内のデータの活用を支援するアプリを販売しました。

このように、FIELD systemは第三者企業が開発したアプリケーションをオープンプラットフォームで提供できるのが特徴となっています。この特徴は集めたデータを扱いやすくするほか、第三者企業の歯衣鉢を促進し、同基板を普及させる後押しになります。

FIELD systemのようなIoTプラットフォームは、ドイツが推進しているインダストリー4.0により注目を集め、現在に至るまで様々なものが生まれてきました。これを受け、より多くの高精度なデータを集めるために各種設備や機械、装置などからデータを取得する動きが強まりました。

現在、産業用IoTとして活発な展開を遂げているのが、アプリストアです。

さまざまな業務の効率化や課題や問題を解決するツールとしてIoTは利用されてきましたが、その流れに適用するためのアプリケーションが求められるようになってきています。

ファナックのFIELD system Storeもこの中の一つとしてスタートしました。まだアプリケーションの数は他と比べて少なく、協力パートナーを増やし、アプリを充実させることが今後の課題となっています。

産業用IoTプラットフォーム「FIELD system」の促進とAI技術の適用

2017年に正式リリースされてから、FIELD systemは複数の製造業に導入・活用されています。今後は特定の工場のラインでの試運転だけでなく、成果を求めた本格的な活用が期待されています。

今後の活用のカギとなるのが、ファナックが明言している「つながる、見える、考える、動かす」を具現化できるアプリです。

ファナックの目指す止まらない工場の実現に向け、今後はAIアプリの開発にも力を入れていくことを方針としています。これにより、IoTプラットフォーム「FIELD system」の促進による、より精度の高い領域の応用が期待されています。