さまざまなシーンでIoT化が進むなか、「自社にもIoT導入をしたい」と検討する企業は増えてきています。しかし、モノづくりを担う製造業においてはIoTに対するノウハウが不足しているケースも少なくなく、「とりあえず導入したら失敗した」という話も珍しくありません。本記事では、企業のIoT活用が上手く進まない理由を考えるとともに、失敗に終わらないためのポイントをお話しします。
製造業がIoT導入において失敗する6つのケース
関心が高まるIoTですが、まだまだ導入企業が少ないのが現状です。IoT導入に成功したという企業ももちろんありますが、失敗に終わってしまったという企業も少なくありません。本項では、IoT導入における典型的な失敗パターンをまとめました。これらのケースを知り、IoT導入に失敗しない対策を考えましょう。
コストの制限で効果的なIoTを構築できない
IoT導入にあたり、システムの構築や運用保守を外部に外注する企業も多くあります。導入からメンテナンス、運用まで専門企業に丸投げすることも可能ですが、高額なコストがかかるため中小企業では現実的に難しい場合も多いでしょう。
一方、安価なIoTサービスもありますが、トータルサポートしてくれる大企業向けのIoTと比べると、単機能で設備やツールが限られてしまいます。その結果、自社のコスト範囲内でIoTを導入したものの、「必要な設備や機器すべてに導入できなかった」といった状況になることも。
期待していた本来の効果が得られなくなるほか、IoTを活用するシーンも限定されてしまい、本格始動せずに終わってしまう可能性が高くなります。IoTサービスの価格やカスタマイズ性はもちろん、導入によって得られる効果を考慮して、継続的に運用できるものを検討することが重要です。
現場がIoTを使いこなせない
IoTを導入すれば、これまでの作業スタイルが大きく変わることは言うまでもありません。便利なIoTがあるにも関わらず、「上手く使いこなせない」となれば、技術とコストを無駄にすることになります。また、十分な説明をすることなく実行してしまうと、現場の抵抗や混乱が起こることも考えられます。
IoT化に関する知識を幹部や管理者がしっかり理解し、トップダウン方式で作業者まで習熟させなければ、失敗に終わってしまう可能性が高くなるでしょう。
まずは導入に備えて、生産性の向上や業務の効率化など、従業員にとっても大きなメリットがあることをきちんと説明することが重要です。そのうえで、IoTの利用方法の教育や管理体制を整えるなど、現場全体で取り組みましょう。
IoT導入の目的が明確でない
IoTの導入そのものが目的ではなく、「IoTを導入し、自社がどのように変わりたいか」という課題や目標設定は不可欠です。目的意識を持たず導入すれば、「思うように活用できなかった」と失敗する可能性が高くなるでしょう。
まずは、自社がIoTを必要とする課題を明確にすることが大切です。そのうえで、いくらの費用をかけて、どの部分をIoT化し、何年で投資額を回収できるのかという緻密な計画を立てましょう。これらをないがしろにして導入すると、生産性の向上という目的を達成するどころか、コストの損失まで被ることもあります。「なぜ導入するのか」「何を改善したいのか」という目的意識を持つことは何よりも重要です。
短期間で効果を求めてしまう場合
IoT化には数多の工程があり、上手く活用していくには当然時間がかかるものなのです。しかし、短期間で効果が出ないことを理由にすぐに諦めてしまうケースがあります。
IoTの導入には「対象となるものにどうセンサーを設置するのか」「情報はどのように運用するのか」「どのように情報を活かしていくか」など、さまざまなと検討項目があります。効果を急ぐ気持ちは分かりますが、導入したIoTを従業員が使いこなし、データを生産活動に活用できるようになるまでには、ある程度の期間が必要です。長期的な視点を持ち、最終的な目標に向かってデータ分析・改善策を考えていくことが重要といえるでしょう。
既存システムや業務との連携が難しい
IoT関連の機器・サービスはさまざまなものが存在していますが、通信方式やデータ形式などはツールによって異なります。そのため、現在利用している既存の設備・機器などとの連携が難しく、「IoTを導入したものの、他のシステムや業務と上手くすり合わせできない」という状況に陥ることがあります。
製造業においては、「機械+人」による生産も多くあるほか、工程管理や事務作業などの人の手で行う業務がたくさんあります。IoTを必要な場所に設置したり、人と機械が上手く連携できるネットワークシステムを構築できなければ、思うように活用が進まないことが考えられます。一部分のIoT化だけでなく、「工場全体でどのようにIoTを活用していくか」というシステム基盤を構築することが重要となるでしょう。
IoT導入を成功させるポイント
IoT導入が失敗に終わらないためには、どのような対策が必要なのでしょうか。
IoT化を成功させるポイントには、以下が挙げられます。
・経営課題を明らかにする
・IoTを活用する仕組みをつくる
・作業者への習得
IoTを成功させるためには、まずは「自社の課題を明確にすること」が重要です。経営者による判断だけでなく、実際に製造に関わる現場の声を聞くことから始めましょう。「このような機能があれば業務が効率化する」「人手が足りておらず製造時間がかかっているラインがある」など、各部門の課題を知ることで、改善すべきボトルネックを見つけることができます。
そして、IoT導入が必要な部門や設備などが決まったら、実際に導入した後の業務フローの見直しや、担当者の配置変更など、現場で上手く活用ができる体制を整えることも不可欠。初めてのIoTで混乱したり、業務に支障がでないように、事前に「作業動線」「人員配置」を見直しましょう。そのうえで、IoTツールをどのように扱うか、作業員へ向けた研修や教育時間を十分に設けることが大切です。基本の操作や業務フローなどをマニュアル化しておきましょう。
製造業のIoT化には専門家の存在が不可欠
IoTはまだまだ浸透していない新しい技術です。導入に失敗してしまわないためには、IoTのノウハウや技術をある程度勉強しておくことが大切でしょう。自社で対応できる人材がいない、ノウハウが無いという場合は、IoT導入をサポートするプロフェッショナルの手を借りることも検討してみてください。計画性を持ったIoT導入で、よりよい会社を目指しましょう。