多くの製造業において注目され始めている現場のIoT化。

納期の短期化、人手不足などの課題を解消するためには、IoTを活用した効率的な稼働が求められています。しかし、「IoTとかよく聞くけれど、実際どのように活用できるのか?」と考える経営者や技術担当者は少なくないでしょう。

 

IoT導入を成功させるために大切なのは「どのようなデータをどう活用するか」ということ。ここでは、IoT導入時にまず知っておきたいIoTデータの収集方法や、データをどのように利用できるのか、さまざま例を挙げて解説していきます。

 

どんなIoTデータを収集をすべきか考えよう

IoT化を進める製造業の多くが直面するのが「どのようなデータを収集するべきか」という問題。やみくもに機器や設備にIoTを導入するだけでは、収集したデータをどう活用すればよいか分からず、コスト負担だけで終わってしまったというケースも考えられます。

 

まずは「どんな課題を解消したいか」を明確化し、具体的な目的を持つことから始めてましょう。現場の課題を把握することで、IoTを導入するべき箇所が明確となり、コストを無駄にすることなく計画的に導入を進めることができます。これこそがIoTを活用したデータ収集のポイントです。

 

IoTで何を解決する?課題に応じたデータ収集が重要

「IoTを使ったデータ収集」と一口に言っても、製造する製品や生産体制、現場の課題によっても必要なIoTシステムは異なります。ここでは、IoT使って具体的にどのようなデータ収集ができるのかを見ていきましょう。

 

例1.「不具合や稼働ストップを防いで、生産性を安定させたい」

「機械の異常をいち早く見つけて、大きなストップが出ないようにしたい」という場合について考えてみましょう。製造工程を自動化している現場では、設備や機器の不具合によって稼働が停止すると、生産性に影響を及ぼしてしまうケースがあります。

 

こうしたトラブルを防ぐためには点検作業が不可欠ですが、人間がこれらの作業を行うとなれば、1日1回もしくはそれ以上で点検をする必要が出てきます。手作業による時間と労力がかかるだけでなく、収集できるデータ量も限られているので、システム異常が起きたときに対処が遅れたり、ストップが起こる原因究明にも困難を要するでしょう。

 

こうした課題に対して、各工程の生産ラインにIoTの導入を検討してみましょう。IoTを導入した「生産ライン」「機械」から電力、外観、温度などのデータを収集・分析することで、システム異常をすばやく検知したり、大きなストップが起こる原因を洗い出すことができます。

 

手作業で行っていた点検作業を自動化できるだけでなく、「リアルタイムでのデータ収集」「取得できるデータ量の増加」により設備点検の精度が向上し、生産性の安定化につなげられるでしょう。

 

例2.「各工程の稼働率を把握し、業務のムダとミスをなくしたい」

人と機械が混在している生産ラインでは、「設定時間通りに生産が終了しない」「人手によるミスで不良品が多い」などにより、稼働率が落ちているケースがあります。

 

こうしたトラブルを解消するためには、「各工程での作業時間や人員数が適切であるか」「ミスの予兆や原因をリアルタイムで把握できているか」といった、現場状況の「見える化」が必要です。

 

しかし、「見える化」を人間が行う場合、設備の稼働信号を手書きで記録したり、各設備の人員や時間を集約して計算する必要が出てくるため、データ収集するだけでも大きな労力と時間を要するでしょう。

 

こうした課題には、各生産ラインや設備にセンサーやカメラを取り付けて、稼働状況をリアルタイムで把握できるIoTシステムを検討しましょう。手作業によるデータ記録や計算が自動化できるだけでなく、各設備からリアルタイムの情報を収集できるため「ミスが発生しやすい工程」「省人化できる作業」などを洗い出すことができます。改善策が明確になることで、業務の効率化や、ミス発生へのすばやい対応が可能となるでしょう。

 

IoTでデータを収集する具体的な方法とは?

工場のIoT化を進めるにあたり大切なのは「必要なデータを収集して管理・活用できる仕組みづくり」です。では、具体的にどのような方法でデータ収集を行うのでしょうか。

工場で取得するIoTデータは主に2種類

IoTを活用すると、主に以下の2つのデータを収集することができます。

 

■生産に関するデータ

・生産数

・生産にかかった時間と人員

・不良品の数

・生産設備の設定状況

・生産に必要な条件や製造情報

 

■設備に関するデータ

・設備の電力や電圧

・設備のオンオフ稼働データ

・温度や振動

・異常信号

 

それぞれ導入する機器や設備、IoTシステムの種類によって収集できるデータは異なるため、課題に応じて必要なデータを見極めることがポイントです。

 

IoTを使ったデータ取得までの3ステップ

工場でIoTデータを取得するまでには、主に3つのステップが必要です。

 

【ステップ1】データのインプット

収集したいデータがある設備やラインに、データ収集ができるセンサーやカメラ、数値測定機器などのIoTシステムを設置します。これは、これまで手作業で行っていたデータ記録や出力作業を、IoTへ移行するためのステップです。また、設備の操作・管理ができるタブレットの入力端末を連携したり、既存設備にPLC(※)を後付けしてデータを取り出すなどの方法もあります。

 

※PLC(Programmable Logic Controller)とは、あらゆる装置や設備に対して、事前に設定した手順で動作を制御する自動化装置です。

 

【ステップ2】インターネットでつなげる

IoTとは「モノのインターネット」という意味があるように、設備や機器をインターネットにつなげることに意味があります。有線と無線を用いて、インターネットへの接続設定を行いましょう。工場内の機器や設備がインターネットとつながることで、遠隔地から工場のシステムにアクセスできたり、複数ある工場の稼働状況を一元管理することなどが可能です。

 

【ステップ3】データ収集して「見える化」する

工場内で集めたデータを「見える化」するために、PCやタブレットなどのデバイスをはじめ、各拠点でインターネット通信を仲介するゲートウェイ端末、クラウド上でデータを管理・保管できるクラウドサーバなどを用意しましょう。

 

生産内容の変更、あるいはIoT機器の追加などにも柔軟に対応できるよう、他のシステムやクラウド環境にもデータ連携できるシステム基盤が必要となるでしょう。

 

まとめ

工場などの製造現場において効果的にIoTを活用するためには、「いかに有効なデータ収集ができるか」が鍵となります。どのような現場で、どのような課題を解消したいのかによって収集するべきデータは異なるため、それぞれの現場に最適なIoTシステムを選定しましょう。

 

また、既存システムのIoT化だけでなく、工場全体のネットワーク構築も不可欠です。「自社にIoTのノウハウがない」「課題はあるが、システム構築の技術がない」という企業は、工場のIoT化をサポートしてくれる会社へ依頼するのも方法のひとつです。