今や私たちの生活に欠かせないコンピューター。1950年代に世界初の商用コンピューターが登場してから、メインフレーム・クライアントサーバー・クラウドと時代が進むにつれて目覚ましい発達を遂げてきました。そして、次世代のインターネットとして注目されているのが「IoT」。今後社会において重要なポジションを担うとされており、テレビやネットでも大きな注目を集めています。今回は、コンピューティング環境の歴史を振り返りつつ、これからの時代を支えるIoTについて解説します。

 

コンピューティング環境の歴史をひも解いてみよう

メインフレーム時代

コンピューターのはじまりは、1950年にまでさかのぼります。世界初となる事務処理用途のコンピューター「UNIVAC I」が完成し、翌年の1951年にレミントンランド社(現:Unisys)が発売を開始。最終的には40台以上が販売され、コンピューターといえばUNIVAC Iといわれるほどに普及していました。

この頃は「メインフレーム」という大型コンピューター製品が主流であり、様々な企業の基盤システムとして稼働。メインフレームは、本体の「ホスト」と入力端末の「ターミナル」に分かれており、これらを通信回線や構内ネットワークで接続することによりデータ処理が可能となります。ターミナルはコンピューターとしての機能がなく、表示や操作といった単純操作のみだったため、データ処理はホストが一括で行っていました。

ちなみに、メインフレームという呼称はここ最近付けられたものであり、当時は単に「コンピューター」と呼ばれていました。

 

クライアントサーバー時代

1980年代には、ユーザーが操作する「クライアント」と、機能や情報を外部へ提供する「サーバー」を通信回線で繋ぐ「クライアントサーバー」というシステムが登場。サーバーは、データの保存やハードウェアの管理といった作業に加えて、クライアントから送られてきた要求の処理を行います。一方、クライアントはサーバーから得た情報を表示したり、要求を送信したりする機能を備えています。

メインフレームのホストとターミナルに似た構造ではあるものの、ユーザーが操作する端末「ターミナル」と「クライアント」のスペックは大きく異なります。ターミナルは表示や操作といった単純な作業しかできませんでしたが、クライアントは1台のコンピューターとして複雑な処理・操作・表示が可能となりました。

 

クラウドコンピューティング時代

2000年代に近づくとコンピューターの価格はますます安くなり、ネットワーク速度の上昇も相まって利用台数が増加。同時に数多くのサーバーが乱立したため、いかにしてサーバーを管理・統合するかが課題となりました。この課題解決に一躍買ったのが、「クラウドコンピューティング」です。

ネットワークを通じてソフトウェアやハードウェアの利用権を提供できるシステムのことで、物理サーバーに近い環境を仮想的に作ることから「仮想サーバー」とも呼ばれています。クラウドコンピューティングが誕生したことにより、1台分のスペースだけで複数のサーバーを立てることが可能となりました。

 

近年注目を集める次世代インターネット「IoT」の歴史

IoT(Internet of Things)は直訳すると「モノのインターネット」となり、身の回りにある“モノ”すべてをインターネットに繋げて相互でやり取りすることを指します。現在急速に拡大しており、2020年には市場規模が280兆円にも上るといわれています。

次の時代を支えるであろう「IoT」ですが、言葉が誕生したのは今から20年以上前の1999年。マサチューセッツ工科大学のケビン・アシュトン氏が初めて使ったとされています。

言葉が誕生した当時は世間に浸透しなかったIoTですが、2010年後半にさしかかると徐々にその存在が広まっていきました。この頃ちょうどスマートフォンが普及しはじめ、インターネットに接続できるデバイスが増加。1人が複数台のデバイスを持つことも珍しくなく、コンピューターがより身近な存在になりました。

また、通信の主体が人間からモノへと変わってきたこともあって、IoTはビジネス分野で急速に広まっていきました。スマートフォンの登場は、IoTの歴史においてターニングポイントともいえるでしょう。

現在はテレビや冷蔵庫といった家電、自動車、公共インフラなど幅広い分野で導入され、東京電力やAmazonといった大手企業もIoT関連のサービス展開に注力しています。

 

なぜ今になってIoTが注目されているのか

IoTという言葉や概念は1990年代から存在していたものの、なぜ今になって注目され始めたのでしょうか。理由としては、まず通信技術の発達によってIoTの運用が現実的になったことが挙げられます。

1990年代はまだインターネット普及率が21.4%と低く、通信環境すら整っていなかったために運用が困難でした。しかし、近年スマートフォンやPCといったデバイスが目覚ましい発達を遂げ、IoTのパフォーマンスを十分に発揮できる環境が整いはじめたのです。加えて、センサーや通信チップが小型化して性能性も向上。これにより、時計や家電といったあらゆる製品に搭載できるようになり、ビジネスモデルを描きやすくなりました。

また、初期費用や開発などのコストが下がったことも理由の1つ。導入ハードルが下がったことで多くの企業がIoTに参入でき、なおかつ消費者もIoT製品を手ごろな価格で購入できるといったメリットが生まれたのです。

このような理由からIoTは注目を集め、現在インターネットとあらゆる“モノ”を接続することが標準化しつつあります。

 

IoTの仕組みと実用例

IoTの仕組みは、大きく3つのステップに分けられます。まず、IoT機器に備え付けられたセンサーを使ってインターネットと接続した“モノ”からデータを取得。有名な実用例としてはApple Watchがあげられ、装着することによって心拍数や消費カロリーといった情報を取得できます。

次に、集めた情報をデータベースに蓄積していきます。そして、このビックデータをAI(人工知能)が分析してデジタル化。デジタル化したデータを“モノ”へと共有することで、生活をより豊かにするサービス提供が可能となります。

このIoTを活用して車の自動運転サービスや、PC・タブレットによる農作物の遠隔監視システム、ユーザーに合わせた自動空調機器といった製品が作り出されています。

 

IoTはAIと違う?

IoTという言葉に並んでよく話題に上がっているのが、AI(人工知能)です。両者は同じ製品に導入されることもあって混同されやすいですが、大きな違いをもっています。AIの定義は明確に決まっていないものの、一般的にはソフトウェアが人間の感情や思考などを模倣して、人間の知的行動を再現する技術といわれています。簡単に言えばAIは人間と同じような結論・行動へ導くための技術で、IoTはビッグデータを蓄積および分析することに特化した技術といえます。

 

まとめ

1950年代のメインフレーム登場から現在に至るまで、様々なコンピューティング環境が誕生してきました。そして、今後は次世代のインターネット「IoT」の普及が進み、通信の主体が人からモノへと移り変わっていくことでしょう。IoT関連のマーケットも順調に拡大されており、より便利な世の中になっていくことが予想されます。