人とモノをつなげる「IoT」の中で、国が提唱する「Society 5.0」。日本が目指すべき未来の形として提唱されている「Society 5.0」は、中小企業でも取り組むべき課題の一つです。しかしどういった意味を持っているのか、知らない人も多いのではないでしょうか。IoT化が進む日本では、将来的に何を目指しているのか確認しておくことも重要です。そこで今回は、「Society 5.0」の詳細と具体例、メリットをご紹介します。

Society 5.0とは

Society 5.0とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」という意味を持つ、国が提唱する言葉です。

 

つまり今までの情報社会(Society 4.0)をよりアップグレードさせ、サイバー空間と現実空間を融合した社会を目指していくという意味です。これにより分断的であった情報が融合され、人とモノの繋がりによる新たな価値の創造を通して、課題解決に繋がると考えられています。

 

日本では、少子高齢化などの社会問題があります。そこでSociety 5.0を実現し、ロボットや自動走行と共存していくことで、これらの問題解決に取り組みます。こういった社会の変容を通し、国民一人一人が活躍できる希望のある社会となるのです。

Society 5.0の仕組み

上記だけでは、実現が困難だと感じることも多いでしょう。言葉だけ理解しても、具体的な仕組みを知らなければ意味がありません。実際にSociety 5.0はどのような仕組みで成り立つのか、まとめていきます。

 

  • 今までの情報社会(Society 4.0)

これまでは、サイバー空間であるクラウドにデータが保存されていました。人々はそこにアクセスすることで、必要な情報やデータを入手し活用する仕組みです。

 

  • これからのSociety 5.0


    しかしSociety 5.0では、現実社会から集められた膨大なデータがサイバー空間に集積されます。このビッグデータを人が入手するのではなく、人工知能(AI)が解析し現実社会の私たちにフィードバックするという仕組みです。

 

今までと全く違う点は、情報を誰が分析、解析するのかという点です。人が情報を分析するからこそ価値のあったSociety 4.0とは異なり、Society 5.0ではAIが解析することで新たな価値を生み出すことになります。これにより、必要な情報の分析を行う手間が省け、自動化や効率化につながります。こうして人々の生活がより豊かに、便利に、かつ様々な問題解決につながるのです。

 

しかしその一方、膨大なデータをどのように取り扱うのか、社会での在り方はどうするのかといった課題も。社会の変化に対応しつつ、情報の取り扱いに関する課題を解決していき、Society 5.0を目指すことを国は提唱しています。

Society 5.0の分野ごとの具体例

仕組みについて解説しましたが、どのように使われているのかという「具体例」も気になります。社会でどう溶け込み活用されているのかは、企業にとっても重要です。ここでは、3つの分野に分けて具体例をご紹介します。

交通

車の運転や運送業など、我々の身近にある交通業界。交通業界では、早くもSociety 5.0に近い取り組みが多く行われています。

 

例えば、開発競争が行われている「自動走行」。自動走行は、過去の走行などをビッグデータからAIが情報を解析し、安全な走行やルートを確定します。この自動走行技術により、過疎化地域への配達や高齢者の送迎といった問題解決に寄与するのです。

 

普段運転する車の場合、今までの運転履歴、走行履歴が情報として蓄積されます。それらの情報をAIが解析し、自分に合ったルートを提示してくれるという仕組みです。将来的には、こういった身近な場面にも活用されます。

医療・介護

生活に欠かせない医療、介護の分野では、多くの医療的データや個人的なデータまでを解析します。

 

「各個人のリアルタイムの生理計測データ、医療現場の情報、医療・感染情報、環境情報といった様々な情報を含むビッグデータをAIで解析すること」

 

これにより、人手不足が深刻な現場の改善や、医療・介護費用の削減につなげることが可能です。

ものづくり

今までの取引や顧客の情報、配送状況などのデータからAIが解析し、新たな顧客の獲得へつなげます。また、需要に応じた生産や開発を行えるようになり、生産効率や利益の向上にもつながるのです。

 

Society 5.0には他にも、

  • 人員配置の最適化や削減
  • 物流の効率化
  • 人手不足の解消
  • 災害時の適切な対応
  • 多様なニーズに応え、顧客満足度の上昇

といったメリットも。

 

しかし導入コストが高くセキュリティ対策も必要なことから、中小企業では導入が難しいデメリットがあります。

Society 5.0による人へのメリット

今までの社会では、社会の仕組みに人間が順応することを求められてきました。「社会の歯車」といわれるように、組織や経済を中心とした社会だったのです。しかしSociety 5.0では、個々の能力や状況に左右されない、格差のないサービスを受けて生活できるようになります。

 

今まで蓄積されたビッグデータをAIが解析し、その人にあったサービスの提供や支援を受けられ、必要のない作業をする手間も省けます。それにより、今まで以上に過ごしやすい生活を送れるようになるでしょう。

 

しかしAIに管理されるかというと、そういうわけではありません。あくまでAIは生活の一助となり、個人を支えます。不必要な作業が省けるため、あくまで主役は人間です。「誰もが快適で活力に満ちた質の高い生活を送ることのできる人間中心の社会」というのがSociety 5.0の考え方です。

 

当然メリットばかりではありません。その多くの情報をどのように扱うのか、導入コストはどうするのかなど、様々な課題を抱えているのも事実です。導入していくにあたり、課題と向き合うことも必要です。

まとめ

多くの中小企業では、将来的にSociety 5.0のようなIoTの導入は必要となるでしょう。導入により他社と差を付けられる前に、早めに対応していかなければいけません。しかしコストや手間もかかり、導入に不安を感じている人も多いのではないでしょうか。一気に導入を進めるのではなく、まずは知識を得ることから始めてみてください。