近年、「IoT」という言葉が聞かれるようになり、仕組みは知らないけれど聞いたことはあるという人が増えています。では、「CPS」はどうでしょうか。こちらはIoTと似ている考え方なのですが、認知度は低い印象です。ここでは「CPS」とは何かについて説明をしていきます。

 

IoTとは何か

CPSを理解するためには、まずIoTについての理解を深めておく必要があります。IoTはInternet of Things)、直訳すると「モノのインターネット」となります。これは身近にもあるものです。例えば、最新家電になると電子レンジにスマホをかざすだけでその日のメニューを提案してくれるものがありますが、この仕組みのこともIoTといいます。

 

普段私たちが使っているデバイス、例でいうところの電子レンジが、インターネットを介して情報提供をしてくれています。昔ならインターネットにつなぐとなるとコンピューターがほとんどでしたが、それが今はあらゆるモノで可能になっています。この仕組みをIoTと理解しておきましょう。

 

現実世界にあるものがインターネットに接続できるようになること、ここに重点を置いているのがIoTです。これはAIにも繋がるもので、近い将来、車の自動運転が可能になるともいわれています。

 

CPSとは

では、ここでCPSについての解説に移行しましょう。これは「サイバーフィジカルシステム」の略です。定義は色々ありますが、そもそこもCPSはIoTの考えの中に存在するため、IoTと混同されやすいのも致し方ない部分があります。

 

IoTと違うのは、現実世界で得られる情報と、サイバー空間で用いられる情報の融合に重点を置いているところです。IoTにもその考え方がありますが、特にそれを重視しているのがCPSです。

 

現実世界のIoTデバイスから得たデータをクラウドなどで分析し、そこで得られた結果を現実世界へフィードバックするところまでをCPSといいます。

 

CPSの流れを表すと、まずは人や自動車などといった対象物に、IoTデバイスを取り付けるところから始まります。そこでデータが収集できるので、それらをクラウド上に転送します。クラウドでデータ解析を行い、必要な情報に絞るなどの精査をした後でこれを対象物にフィードバックします。これによって今までよりもより効率的に、より正しい制御ができるようになります。

 

何故CPSの考え方が重視されてきているのか

今の社会でも十分便利になっているのに、なぜ今CPSの考え方が注目されているのかというと、その理由はいくつかに分けられます。

 

テクノロジーがCPSの考え方においついた

1つは、CPSを可能にするだけのテクノロジーが発展したことです。

今までは、技術が発展してCPSを可能にできても、導入コストが高額なことがネックで広まりませんでした。認知度が低いのはそのためでしょう。しかし現在は、実際に活用できるフェーズに突入し、しかも低コストで実用できるような環境が整ったため注目されているのです。

 

従来では半導体製造工程/化学プラントなどの分野で活躍していたものですが、現在は低コスト化ができるようになり、ネットワーク環境の整備や、センサー技術関係、時間がかかっていた統計解析プロセッサを高速で動かすために導入するところが出てきました。

 

私たちの身近なところではスマホが関連しています。スマホの普及により通信チップを安価で製造する必要が高まりましたが、これもCPSが可能にしています。人ではなく機械が学習をするという技術も今までなら不完全性が高いものでしたが、それが発展するきっかけになりました。これからはより正確性が増すでしょう。

 

ITがインフラに組み込まれた

CPSが注目されてきた理由の2つ目は、ITが社会システムのインフラにまで組み込まれてきたからです。

 

これまでのITというと、それが使われている場面は限定的でした。機械の制御が必要な航空機などが思い浮かべやすいでしょう。パイロットはフライトの全ての時間を自分で操縦しなくても良く、自動運転にできる部分もあります。これが今では、人が生きていくのに必要なインフラ設備にまで導入されてきたのです。

 

インフラというと、環境や交通だけでなく、経済やエネルギー、食糧とも密接な関係があります。医療にもITが組み込まれるとなると、命を左右しかねないためより正確で素早い対応が必要となります。

 

このような風雑な情報を整理し、必要としている人の元へ送るためにはCPSの働きが必要になります。これがあるとないとでは、非常事態に対する対応や、更なるテクノロジーの進化に及ぼす影響が変わってくるでしょう。

 

身近なCPSの事例

インフラもそうですが、より身近にCPSの活躍を感じられるところの一つとしてコンビニがあります。省エネは人類がこれからも地球で生きていく上で大切な問題ですが、これについてもCPSが重要な役割を果たしてくれています。

 

CPSのおかげで、コンビニは10%の省エネを実現できました。これは人がこまめに電気を切るのではなく、照明をクラウドが制御したことによって実現したものです。その他にも、コンビニを運営する上でより効率的、かつ最適になる方法は何か、他の設備を制御することによって結果を上げてきました。もしこれが一般家庭で可能になれば、より細かく節約ができ、光熱費の削減に貢献してくれることでしょう。

 

海外では更に色々な試みが実験・開始されており、これから世界規模で重要になってきそうです。交通事故を減らしたり、健康寿命を伸ばしたり、会社の業績アップを図ったり、結果的にはこのようなものへとCPSがつながっていきます。人がより快適に暮らせる未来はすぐそこまで来ています。

 

まとめ

IoTの考え方の中に存在するCPS。インターネットという概念が浸透してからかなりの時間が経ちましたが、今がまさに、CPSの考え方によってそれが更に進化を遂げようとしている最中です。ある一定の分野で進化するわけではなく、私たちにも関係がある分野で進化するため、生活の質向上に役立ってくれることに間違いないでしょう。