近頃ニュースなどで良く耳にする「第4次産業革命」という言葉。人工知能「AI」や“モノのインターネット”といわれる「IoT(Internet of Things)」といった革新的な技術・産業の登場により、私たちの生活やビジネスが新たな変化を迎えようとしています。

 

こうした新たな産業革命を迎えるにあたり議論されているのが、「人の仕事がどう変わるのか」ということ。AIやIoTによって人間の仕事が奪われてしまうという話がありますが、実際に社会にどのような影響を与えるのでしょうか。今回は、あらゆるビジネスが第4次産業革命に対応するうえでの課題について、活用事例を見ながら考えていきます。

 

第4次産業革命とは?

第4次産業革命とは、AIやIoTといった技術革新によって起こる産業革命のことを意味しています。これまでの産業の歴史を見てみると、「手作業を機械化」することから始まり、電機や石油などのエネルギー革新による「大量生産化」、IT技術の発展により「コンピュータによる自動化」という流れで、現在に至るまで大きく進展してきました。

 

これらに続く第4の産業革命として生まれたのが、

 

・AI(人工知能)

・IoT(モノのインターネット)

・ロボット

 

これらを活用したモノづくりです。

単に作業を自動化するというだけではなく、「人工知能を搭載した機械が自律的に動く」「モノから取得したデータを使って相互制御する」といった新たなシステムを構築することで、産業のさらなる発展、生活の質の向上を目指すというものです。

 

製造業においてより効率的な生産が可能になるほか、AIやIoTから得たビッグデータを利用した新たなサービスや付加価値の創出が期待できるとして、さまざまな企業が導入を進めています。しかし、それと同時に「これまで人が行っていた仕事が失われるのでは?」と示唆する声も上がっているのが現状です。

 

IoTやAIをどう活用する?活用事例を見てみよう

あらゆるビジネスが第4次産業革命に対応するための重要なキーワードとなるのは、「ビッグデータの活用」「AIの活用」という2点です。活用事例とともに見ていきましょう。

 

1.ビッグデータの活用

ビッグデータとは、いわゆる「膨大な情報量」という意味だけではありません。PCやスマートフォンなどの通信機器から取得したデータだけではなく、IoTによって製造設備などのさまざまな“モノ”から得られる大量のデータのことを指します。

 

IoTでは、設備の稼働状況や製品情報などの多種多様なデータを蓄積し、インターネットを通じて管理することができます。得られたビッグデータを分析すれば、あらゆる商品やサービスの開発に役立てられます。

 

こうしたIoTデータを活用したサービスには、以下が挙げられます。

 

■医療・ICTヘルスケアサービス

ソフトバンクでは、腕などに身に着ける「ウェアラブル端末」や「見守りデバイス」から取得した身体データを利用して、医療機関が遠隔操作を行ったり、家族や病院がモニタリングできるIoTサービスを提供しています。重症化を防止して医療コストを削減できるだけでなく、医療機関の効率的な稼働にもつなげています。

 

■IoT幼稚園

韓国では「IoT幼稚園」と称して、幼稚園での送迎バスでの様子や教室、園庭にそれぞれカメラやセンサーを設置することで、子供の様子を自宅にいながらリアルタイムで見守ることができるIoTシステムを導入。仕事の休憩時間や自宅からでも確認できるため、共働き世帯にもニーズが高いといえます。今後日本でも導入される可能性は高いでしょう。

 

2.AIの活用

これまで人が行ってきた作業や対応などを、AIを用いたシステムやロボットが代わりに行うシステムが登場しています。人手不足や技術継承の面においても役立てられることから、今後さらに企業への導入が進められるといわれています。

 

代表的なものには、音声対話ができるコミュニケーションロボットや、画像の認識技術を利用したAIカメラ、高度な手作業を自動化できるAI機器などが挙げられます。

 

■「ガンの兆候」を見つけだす内視鏡AI

あるクリニックでは、年間9,000件もの内視鏡検査が行われており、医師の負担が増大し、医師の処理能力を大幅に上回っていました。そこで、高精度の画像解析ができる「内視鏡AI」を導入。胃がんの原因を98%という高い精度で発見でき、今まで医師が1時間かけて行っていた作業をわずか60秒でできるようになったことから、大きな業務貢献を果たしています。

 

■踏切内の異常をAIが検知

鉄道事故を少しでも防ぐことを目的に、踏切内の監視カメラの映像から異常を検知する「AIによる映像解析プラットフォーム」を導入。異常を発見した場合、走行中の運転手や運行管理者にすばやく伝え、危険を回避するといった役割を果たしています。2秒以内での警告が可能になることから、事故を防ぐなどの安全面の確保に役立てられています。

 

AIやIoTの導入によって得られる企業メリットとは?

 

生産性の向上

第4次産業革命で大きく貢献できるのは、生産性の向上です。百貨店などの販売業務においては、さまざまな問合せ対応や接客対応をIoTやAIが代わりに行うことで、人件費削減や業務効率化につながります。製造業では、製造設備にIoTやAIを導入すれば、製造プロセスを効率化したり、属人的な手作業を自動化できるようになるでしょう。その結果、企業全体の生産性が向上していきます。

新しいサービスや付加価値の創出

IoTの活用により、これまで収集できなかった多種多様なビッグデータを収集し、さらにAIによって分析できるようになります。従来よりも広い視野で新たな知見や情報を得られるため、新しい商品・サービスの開発や、付加価値の創出につながると考えられています。これからの企業が生き残るためには、「IoTやAIを使ったデータ活用」が不可欠となるかもしれません。

 

「人の仕事を奪う」というリスクも

IoTやAIの活用によって業務が効率化する、企業価値の向上に役立てられるというメリットがありますが、同時に「人の仕事を奪ってしまう」というリスクが示唆されています。これまで人が行ってきた作業の多くを自動化できる仕事については徐々に機械に代替され、雇用されていた人が失業したり、求人が少なくなるなど、就職における「買い手市場」になることが予想されています。

 

第4次産業革命となる新たな社会に対応していくためには、IoTやAIの活用に向けた新たな職務やポジションを設けるなど、時代に応じた採用活動・人事戦略が必要となってくるでしょう。

 

IoTとAI活用に向けた企業の課題とは

コスト面での課題はもちろんですが、IoTやAIを企業で上手く活用するためには、ノウハウやシステム構築の技術が求められます。「どこからIoTデータを取得して何に活用するか」「どのような業務にAIを導入するか」など、これらの技術を最大限に活用できる人材が必要です。

 

しかし、多くの企業ではこうした「デジタル人材」が不足しているケースも多く、導入にリスクを感じている担当者も少なくないでしょう。これらの課題に対して、IoTやAIの導入をサポートしてくれる外部企業の手を借りることも手段のひとつです。

 

また、IoTやAIを活用するためには、インターネットを通じた安全なネットワーク基盤が不可欠です。企業の機密情報や顧客情報などの重要データを保管・管理する必要があるため、「プライバシーやセキュリティの安全性をどう守るか」ということも重要です。

 

不十分な管理で情報漏えいが起きると企業にとって大きな損失となるほか、社会的な信頼も失ってしまいます。さらには、近年多発しているサイバー攻撃に対する備えも不可欠。IoTやAIを導入するにあたり、安全なネットワーク環境を構築することは企業が取り組むべき課題といえるでしょう。

 

まとめ

第4次産業革命により、私たちの生活や仕事の仕方が大きく変わりつつあります。IoTやAIによってこれまでの仕事が代替されるケースも増えてくると予想されていますが、IoT・AIから生み出される新たなデータや付加価値を、最大限に活用していくことが重要です。そのためには、人間特有の創造力やアイデア、データ活用のスキルなどを育成し、「人とIoT・AI」が上手く共存できる仕組みづくりが求められるでしょう。人手不足や生産性向上に向けた取組のひとつとして、さらには今後企業が生き残るための手段として、導入を検討してみてはいかがでしょうか。