生産性向上の重要性が増す中、製造業で働き方に改革を起こす上で今「ペーパレス」が注目を集めています。セキュリティや環境面、資料検索など、今まで紙に印刷し配布していた情報伝達を電子化し、データでのやりとりにすることによってさまざまなメリットがあるのです。それでは、中小製造業でペーパレス化するメリットと事例を紹介します。

ペーパレスとは?

紙の使用を大幅に少なくした作業環境のことをペーパレスといいます。

製造業の現場では毎日のように色んな記録が作られていますので、それらを紙に印刷して保存するのは大変な労力と時間がかかります。

そこで、それらの記録を電子化(IT化)し、データとして保存することによってコストの削減や保存場所の節約になります。それだけではなく、生産性の向上やセキュリティー強化、環境への配慮にもつながるのです。

企業内の文書は、平成27年に改正された「e-文書法」により、運用の方法が定められています。

法律の改正によって、すべての契約書や領収書は「電子帳簿保存法」により保存することが可能になり、2017年からは、スマートフォンなどのカメラで撮影した領収書や請求書を電子化することも認められ、ペーパレス化が一気に加速しました。書籍はデジタル書籍へ、切符からICカードへ、紙チケットからデジタルチケットといった変化もペーパレス化には含まれています。

ペーパレス化(IT化)するには?

ペーパレス化(IT化)を始めるには、紙の代わりになる端末やシステムを導入する必要があります。

クラウドストレージはデバイスであるハードディスクドライブに保存するのではなく、クラウド上にデータを保存し、管理します。なので、いつでもどこでも自由にデータへのアクセスが可能になり、各端末にデータが保存されないので安全です。

最近では品質管理の要件から、10年以上の長期に渡って記録を保管することを求められることがあります。これを紙のまま管理し、保管するのは大変です。

さまざまな記録を紙のままではなく、経年劣化のない“データ”として管理するには、電子化したデータを保管しておく場所、セキュリティ性を保ちながらアクセスできるネットワーク、電子化したデータを閲覧するデバイス、この3つの基盤を整えることが必要になります。

デジタル情報にはかならず「不正アクセスによる情報漏洩」問題がついてまわりますので、ペーパレス化(IT化)をはかるのならまず始めにセキュリティーを強化することが大事になります。

セキュリティー強化には、ファイルサーバーとデバイスの間を部外者が侵入できないネットワークでつなぐことが重要です。

データを保管するファイルサーバー自体にもアクセス権限を設定できることと、「誰が」「いつ」「どんな情報にアクセスしたのか」の履歴が残るという、セキュリティの強化につながる機能が備わっています。

データを保管しているファイルサーバーと、そこにつながるネットワークそれぞれでセキュリティ対策をすることで、データの安全性を高められるのです。

メリットは?

書類や記録を電子化して保存するペーパレス化には、多くのメリットがあります。その中でも特に大きなメリットとして、コストの削減が挙げられます。

たとえば、会議中に配る資料を必要な人数分印刷すると、会議がある度に紙代や印刷にかかる電気代などの印刷コストがかかります。毎日のように色んな記録が作られている中で記録が紙で作成されていると、保管場所を設けるための部屋や棚を用意したり、専用のファイルを用意したりと作業も大変です。

そこで、ペーパレス化(IT化)すれば人数分の資料を用意する印刷コストや、保管、管理にかかるコストが削減できます。それだけではなく、プリンターのメンテナンスコスト、資料を郵送したり、ファクスしたりする郵送費や通信費まで節約することができるのです。

紙のままで記録が管理されている場合、必要な情報があるときには物理的に棚や段ボールなどからファイルや書類、記録を探し出さなければなりません。また、書類や記録をファイルにしまったり、移動させ並べたりと、管理するにも労力と時間がかかってしまい、効率が良いとはとても言えません。

記録が電子化されていれば、保存されているデータのすべてを検索できるので、取引先や出張先からでも瞬時に必要な記録にアクセスすることができます。ファクス報告もデータとして共有すれば、生じやすい問題であった共有の抜けやもれ、遅延も防ぐことができ、報告を受ける側の業務を効率化することもできるのです。

さらに、紙の記録を電子化すれば長期保管も可能。その方法も簡単です。紙のままだと経年劣化や盗難、火事による消失などで紛失してしまうと復元するのは困難です。しかし、電子化することによりデータ化された記録をクラウドに保存しておけば、パソコンやサーバーが故障したり、盗難にあったりしたとしても復元することが出来ます。

ペーパレス化(IT化)の事例

ペーパレス化(IT化)の実例といえば、ペーパレス会議があげられます。ファイルサーバーを作り、そこへパソコンやタブレットなどがアクセスできるネットワークをつなげれば、管理、保存されている資料を印刷することなく情報が共有され、閲覧できるようになります。

会議資料に万が一不備や誤りがあってもすぐに修正することができ、過去の会議資料の確認も容易にすることもできます。参加人数分の資料を作るためにかかっていた労力や時間、コストがペーパレス化により大幅に削減されたのです。

また、紙の記録を電子化することにより資材購買の申請、見積もり、注文書作成、納品書作成などの一連の業務手続きがシステム化できます。それにより、処理にかかっていた時間も大幅に削減できるのです。

まとめ

製造業の現場では、大量の記録によって業務効率が悪くなっています。紙の記録を電子化することにより、セキュリティの強化やデータ管理が効率的になるなどのメリットがあります。今後、世の中のペーパレス化の流れはさらに加速するでしょう。製造業現場での業務効率を改善するためにも、ペーパレス化(IT化)はおすすめです。