IT化やIoT化の流れは製造業にも訪れています。現場のデジタル化を図るツールのひとつとして、工場や倉庫にある金型などの資産管理を行なうITシステムがあります。金型の棚卸しや台帳の整備、資産管理などが、資産管理システムの主な内容です。金型などの資産管理をデジタル化して徹底することで、経営効率化につながるのです。

製造業におけるデジタル化の必要性

今やあらゆる企業でIT化が進んでおり、中小製造業でも例外ではありません。むしろ今後積極的に取り組んでいくべきなのは中小製造業のような会社であって、IT化の流れに乗れなければ業界で生き残るのが難しいと考えておくべきでしょう。

全てのビジネスがコモディティ化すると言われる現代、他社との差別化を図るためには製造業においてもデジタル化を進めていく必要があります。IT技術を積極的に取り入れて業務効率化をして、ヒトが創造する業務にしっかりと人件費を割くこと、さらに進んでIoT化によって製品に付加価値を加えることなどが求められます。

ただし、資金不足・人材不足である中小製造業では、IT導入を一斉に行なうことは難しい現状にあるといって良いでしょう。そこでまず中小製造業が取り組むべきこととして、資産管理のデジタル化(IT化)があります。

会社の大事な資産のひとつである金型などをデジタルで管理することによって、会社の資産状況・経営状況を把握しやすくなります。それはつまり、業務効率化や経営効率化を促進します。また大量に金型を保有する会社では、台帳に記載された設備資産情報と実態が一致しないケースが生じることもあります。デジタル管理システムを導入することでそのような事態が避けられ、資産管理の徹底・最適化にもつながります。

資産をデジタル管理する方法

金型などの資産をデジタル管理するとはどういうことなのか、具体的な方法を解説します。デジタル化(IT化)を行なう主な方法としては、台帳化と識別ラベルの付与です。それぞれ、詳しく見ていきましょう。

①台帳化による管理

デジタル管理する方法としてまずポイントとなるのが、デジタル台帳化です。多種多様で膨大な数量の金型を、手書き台帳や表計算管理ソフトなどで管理していると、台帳管理や棚卸しに手間や時間がかかります。この手間や時間を省ければ、人材の割り当てや人件費の配分の見直しを検討できるようになるはずです。

また従来の方法では、台帳上のデータと実際の資産が一致しないことも起こり得ます。数万点規模に上ることもある金型などの固定資産を、デジタル化(IT化)によって一元管理することで会社全体の資産をより正確に把握できるようになります。それが設備や資産の適正活用、管理工数低減といった見直し・改善へとつながります。

IT技術の導入により、金型等の複数資産を一括読み取りを可能にします。そしてデータと現物の照合からデータ更新までを自動化することで業務効率化が実現します。また棚卸しをするだけで、操業に必要な設備と不要な設備とを自動で分類することも可能になります。稼働状況を正確に把握することが、資産の適正管理にもつながっていくのです。

このようなデジタル化のサービスを利用すると、実際の現場で各種資産に対する現物確認を行ない資産台帳の整備をして、デジタル化(IT化)までの作業の代行を依頼することも可能です。またその後のデータ維持・管理に至るまでフォローしてもらえます。

②資産に識別ラベルを付与する

デジタル管理の手段として、資産に識別ラベルを付与することも挙げられます。金型など対象の資産に管理をするための識別ラベルを貼り付けておくことで、より簡単に資産管理が行なえます。識別ラベルとして、バーコードやQRコードを活用するのも有効です。

棚卸しの時などには、タブレット端末をかざしてラベルを読み取りるだけで、棚卸しリストから自動で消し込みをします。端末をかざすだけなので対象物を探す必要がありませんし、自動で認識して読み取るため考える手間もありません。またデータ上で自動で消し込みするため、書いたり入力したりする作業も不要です。

対象物の数量を確認する棚卸しは、ただ数を確認するだけの作業ではありません。対象物に関する知識がなければスムーズに行えないのです。そのため、識別ラベルの付与により確認作業が簡単になれば、専門知識が不要で属人化が解消され、場合によっては外部委託という選択肢も加わります。そうすることによって、従業員が本来の業務に専念できるようになり、生産性の向上も期待できるというわけです。

金型をデジタル管理することのメリット

IT化することで、企業の現状や改善点が見えてくると言われます。それは、資産管理や業務管理をデジタル化して一元管理することで、企業全体でデータの情報共有がしやすく見える化につながるためです。またIT技術の活用は、単に人の仕事を奪うのではなく、人材を本来しっかり投資すべき場所に配置できるということです。

特に製造業では、金型などの資産をデジタル管理することのメリットは大きく、業務効率化や経営効率化、生産性向上といったことにまで影響します。金型をデジタル化してしまえば、何よりもまずその管理が圧倒的に楽になります。楽になるとはつまり、手間や時間の節約となり、人材の使い方を見直すことも可能となります。人材不足で頭を抱えることの多い中小製造業であるからこそ、取り組むべきことだと考えられます。

またデジタル化によって資産台帳の精度が向上するので資産を正確に把握し、その状態を自動的に維持できます。不要設備や遊休設備を適切に判断して管理することで、資産を無駄なく活用することとなります。さらに資産を正確に把握することは、固定資産税の最適化、不要な投資の抑制も実現するのです。

まとめ

中小製造業においては、慢性的に人材不足や資金不足な状態になりがちです。IT投資には確かに費用も必要ですが、国や地方自治体の援助が受けられるケースもあります。金型などの資産のデジタル化ひとつにしてもこのような業務改善が見込めるのであれば、検討してみる価値はあるのではないでしょうか。