利便性やセキュリティ面でメリットが多いとされるペーパーレス化。2016年には、すべての契約書や領収書は電子保存が可能になる法改正が行なわれるなど、国や行政の方針としても、ペーパーレス化(=電子化 ※大きな意味でIT化)が推進されています。ここでは、社内の作業マニュアルに焦点を当てて、ペーパーレス化(IT化)のメリットについて解説したいと思います。

ペーパーレス化(IT化)することの5つのメリット

作業マニュアルを電子化してペーパーレスにすることで期待できる効果はさまざまです。特に注目したい5つのメリットについて見ていきましょう。

①マニュアルを探す手間が省ける

電子化することで、マニュアル本体を探したり所定の場所から取り出したりする作業が不要となるうえ、電子化することでマニュアル内の検索も容易になります。検索をかければ必要な情報をすぐに入手できるため、作業マニュアルについて時間を割いて調べるという手間が省けます。また作成する側としても、従来のマニュアルをわざわざ調べて取り出して作業するといった手間がなくなるので、追加・更新にかかる作業が簡略化されます。

②情報共有が瞬時に可能になる

電子化すれば、一定のセキュリティの元においては、いつでもどこからでも閲覧が可能となります。場所を問わず利用できるうえに情報共有のタイムラグがなくなるので、テレワークやモバイルワークの推進にもつながると考えられます。また例えばオフィスと現場といった隔たりをなくしてすぐに共有可能なのも大きなメリットとなるでしょう。

③省スペース化

作業マニュアルをペーパーレス化することでファイルや棚が不要になるので、スペース確保にもつながります。マニュアルだけでは省スペース化への貢献度は低いかもしれませんが、さらに書類の電子化を推進していけば、保管スペースや倉庫を有効活用することも可能です。作業マニュアルのペーパーレス化をまずは試験的に導入してみるのも良いかもしれません。

④時間・コスト削減

紙でマニュアル管理していると、追加・更新するたびに作業を行ない印刷するという作業が発生します。また、誰もが使いやすいマニュアルを作成しようと考えると、内容を整理するのにさらに作業を要することもあります。電子化してしまえば、時間やコストの削減にもつながるというわけです。ペーパーレス化をさらに推進することで、会社経営にも関わるほどの結果になることもあるでしょう。

⑤バックアップに強い

紙の書類だと、紛失や盗難、火災による焼失など、失ってしまうと復元するのが難しいケースもあります。電子化された書類をクラウド上に保存しておくことで、いざという時でもすぐに復元可能です。パソコンや自社サーバーが故障した時でも、クラウド上にデータがあれば安心です。

ペーパーレス化のデメリット・推進されない理由

国で推進するという流れがあったり、実際さまざまなメリットがあったりするものの、特に中小企業などにおいてはまだまだペーパーレス化が浸透していないという側面もあります。電子化が推進されない背景として、デメリットとしてはどのようなことがあるのでしょうか。

例えば、システムダウンが生じた時にデジタル文書が利用できない、画面の大きさなど環境によっては使いづらいこともある、ITリテラシーの問題で共有しづらい面もある、などが挙げられます。ただこれらは、ペーパーレス化を否定するほどの大きなマイナスだとは言い難いのではないでしょうか。

実際のところネックとなっているのは、紙の書類から電子化することに抵抗がある人が多いことだと考えられます。特に年配の方やベテラン社員などは従来のやり方を変えるのに抵抗感を持つケースが多いのが要因でもあります。これは、あらゆるIT技術の導入においても同様のことが言えます。

もう1つネックとなるのが、コスト面です。作業マニュアルのペーパーレス化をはじめ、電子化を進めていくとコスト削減につながったり、作業効率化で収益アップを図ったりすることも可能なのですが、そこまでの問題として初期費用があります。導入に際しての初期費用や時間コストを考えると躊躇してしまうケースが少なくないようです。

ペーパーレス化を導入する際のポイント

先に取り上げたデメリットをふまえて、作業マニュアルのペーパーレス化を導入する際にはどうすれば良いのでしょうか。主な課題として挙げられるペーパーレス化への抵抗感と初期費用について考えてみましょう。

まず、社員の抵抗感についてですが、本格的にペーパーレス化を行なうのであればトップダウン形式で導入を実行してしまうことです。そこに明確なビジョンがあり、社員をフォローする姿勢があれば問題ないはずです。作業マニュアルを電子化することの利点、目的をまず明らかにしましょう。そしてセミナーや教育に時間を割くなどといったフォローも考えましょう。

初期費用に関しては、クラウドサービスをうまく活用するなどしてコストダウンを図りましょう。まずは作業マニュアルのペーパーレス化を、という程度ならクラウドサービスでも十分対応できます。文書管理システムなどと比較するとできることは限られますが、電子化された文書の管理や検索が主となるマニュアルならば問題ないかと思われます。

ペーパーレス化のためのツール

作業マニュアルのペーパーレス化を実行するためには、ツールの導入も欠かせません。ツールの選び方、活用の仕方によっては初期費用を抑えることもできるので、比較検討してみてください。作業マニュアルのペーパーレス化に必要なツールは主に次の2つです。

タブレット端末

ペーパーレス化のハードウェアとして代表的なものがタブレット端末です。オフィスでの利用はもちろんのこと、現場で活用することも考えるとタブレット端末は必須といえます。パソコンよりの感覚的に操作できるため、ペーパーレス化に抵抗のある人でも慣れやすいというメリットもあります。

クラウドストレージ

クラウド上にデータを保存すれば、一元的なデータ管理が可能となり、いつでもどこからでもアクセス可能な状態になります。各端末にデータが保存されないので、セキュリティ面でも安全です。

まとめ

作業マニュアルをペーパーレス化することで、手間や保管スペース、時間・コストが省けます。情報共有も瞬時にできるので、オフィス内での共有、オフィスと現場での共有においてもスムーズになります。初期投資として時間や費用は要しますが、長い目で見ると作業マニュアルのペーパーレス化は業務効率化を目指すのに有効な方法だと考えて良いでしょう。