近年「IoT」というワードが急速に広まり、国内の市場規模も拡大を続けています。2018年時点ですでに6兆円を超えており、2023年には11兆円近くまで成長する見込みです。この次世代を担うであろうIoTと並んで、注目を集めているのが「M2M」です。どちらも新たなテクノロジーで混同されがちですが、いくつかの違いが存在しています。そこで本記事では、IoTとM2Mの違いについて解説します。

 

IoTについて

IoT(Internet of Things)とは、身の回りに存在する“モノ”をインターネットに繋げて通信を行う仕組みのことであり、日本では「モノのインターネット」とも呼ばれています。ここでいうモノは、PCやスマートフォンに限らず、家具・家電といったアナログ機器も含まれています。

IoTは様々なモノから大量のデータを収集して分析を行い、今まで見えることのなかった情報を可視化。これにより、業務の効率化や生産性の向上が図れます。さらに、分析したデータをモノに共有することで、シーンや状況に合った適切な動作の実行が可能になります。

2025年には500億台近くのIoT機器が誕生するといわれており、通信の主体も人間ではなくモノに移り変わると予想されています。

 

M2Mについて

M2M(Machine-to-Machine)とは、機械同士がネットワークで繋がって情報をやり取りする仕組みのことです。IoTが誕生する前から存在していた技術であり、機械のみでアクションを完結できることが大きな強み。人間を手を介さないため、正確かつリアルタイムでの制御が可能です。また、IoTとは違って情報をインターネット環境に送信する機能がないため、基本的にはローカルネットワークでやり取りが行われます。

M2Mを導入した例としては、自動車の運転技術が挙げられます。自動車に搭載されたカメラ・センサーを使ってデータを収集して、人工知能(AI)が適切なアクションを判断。それに基づいて、障害物の認識や車間距離の維持といった操作が実行されます。

M2Mは自動車だけでなく、すでに幅広い分野で導入されています。例えば、エレベーターの遠隔監視や道路交通情報通信システムなどが挙げられ、私たちの生活には欠かせない存在となっているのです。

 

IoTとM2Mの違いとは

IoTとM2Mの大きな違いとしてあげられるのは、最終的に繋がるものが「機械」か「人間」かという点です。

M2Mは前途した通り、機械だけでアクションを完結させられるため、人間の介入が必ず必要というわけではありません。むしろ、人間を必要としなくなって初めて完璧な状態ともいえるでしょう。一方、IoTは操作を実行するのも収集したデータを活用するのも、すべて人間です。インターネット環境を介して、最終的には必ず人間と繋がるのです。

そのほかにも、両者にはいくつかの違いが挙げられます。

 

使用目的

IoTの目的は、収集したデータの活用にあります。大量のモノから得たビッグデータを分析して、新たなビジネス価値の創造や市場開拓などに利用します。また、M2Mとは違って対象物を限定しないため、第一産業からサービス業まで幅広い分野にてデータを活用できます。一方、M2Mは機械同士での情報収集および制御が目的です。基本的には製造業分野にて導入されることが多く、生産性の向上やコストダウンに貢献してくれます。

 

通信環境

IoTはインターネット接続ありきの仕組みであり、オープンネットワークを利用することで膨大な情報を収集できます。上記でも述べた通り、そのデータを分析してあらゆるシーンで活用するのです。一方、M2Mは機械の制御が主な目的であるため、必ずしもインターネット接続が必要なわけではありません。機械同士での接続を第一に優先しており、場合によってはクローズ環境で運用されるケースもあります。

 

IoTとM2Mが抱える問題点

IoTとM2Mに共通している問題点としては、セキュリティ面が挙げられます。近年、サイバー攻撃の手口が巧妙かつ悪質化しており、IoTとM2Mがターゲットにされることも増えています。仮に、M2Mを導入した自動車運転技術へ不正アクセスされた場合、事故やトラブルなど社会に甚大な被害を生み出すことでしょう。

また、IoTにはこれまで以上の脅威が潜んでいるとの声が上がっています。IoTにおいては連携しているシステムやデバイスの数が多く、セキュリティ脅威が顕著化すると影響を与える範囲が拡大してしまいます。加えて、PCやサーバーとは違い機能の実装に制約があるため、十分といえるセキュリティ対策が実施できません。

その結果、IoTの脆弱性を利用したサイバー攻撃が世界中で発生。2016年10月にはアメリカのDNSサービス企業が攻撃を受け、Amazonなど大手サイトのサービスに影響を及ぼしました。脅威スピードは加速し続けており、2015年下期から2016年上期にかけて、IoT機器への不正アクセス検出件数が4倍になったとの報告も上がっています。

事態を悪化させている背景には、サイバー攻撃の手口が巧妙化したことに加えて、ユーザーのリテラシー不足もあります。リテラシーが不足していると、初期設定のまま放置する、ソフトウェアを更新しないなど、セキュリティの脆弱性管理が疎かになってしまいます。その結果、不正アクセスやハッキングなどの危険性が高まるのです。

そこで日本政府は、新たなネットワーク脅威に対処するため「IoTセキュリティガイドライン」を策定。ガイドラインでは、セキュリティ対策における重要性やIoT導入に伴って確認すべき事項などを示しています。

IoTはもちろん、M2Mといったテクノロジーを導入するのであれば、まずはセキュリティにおけるリテラシー向上が欠かせません。そして、それぞれに最善のセキュリティ対策を施し、悪質化するサイバー攻撃へ備えることが大切です。

 

まとめ

IoTはモノから得た情報を管理・活用する仕組み、M2Mはモノ同士で情報交換・制御し合う仕組みです。両者とも人間とモノの関係性を変化させるテクノロジーであるという点は共通しているものの、使用目的や通信環境が異なります。それぞれの特性や違いを活かした上で、ビジネスに活用することが必要です。