昨今、日常生活にも浸透してきた「ヒトとモノ」をつなぐ「IoT」。そのIoTを取り入れた国の取り組みの一つに「Connected Industries」があります。この取り組みではConnected Industriesの主役は中小企業、といわれるほど中小企業は大事な存在です。しかし、今までIoTやConnected Industriesを聞いたことのない人にとっては、主役といわれてもよく分からないと思います。そこで本記事では、「IoTを取り入れたConnected Industries」とそれに伴う中小企業のメリットについてご紹介します。
「Connected Industries」とは
国の取り組むConnected Industriesとは「「Connect(つなぐ、つながる)」、つまりデータを介した企業間連携を進め、日本の製造業全体を底上げするための施策」をいいます。例えば、「もの×もの」「人間×機械・システム」「企業×企業」が協調、協働しデジタル社会を実現することです。
製造業であれば、今まで蓄積されてきた「ヒト」のノウハウをIoTでつなぎ、時代にあったデジタル化を進めることです。これは「人間×機械・システム」であったり「人間×人間」の協働にあたります。デジタル化、ネットワーク化を行うことで、国全体の競争力が増し、製造業全体の底上げにつながるのです。
このように、今までバラバラに管理されていたモノをConnected Industriesによってつなげ、将来的に「データがつながり、有効活用により、技術革新、生産性向上、技能伝承などを通じて課題解決へ」つなげる取り組みになります。
Connected Industries実現への取り組み
中小企業が大きな役割を担うConnected Industries。この施策で、国は実際にどのような取り組みをしているのか気になります。施策を知ることで、自分たちの課題を知ることにもつながるでしょう。ここでは、実際の実現への取り組みについてご紹介します。
「分野別」の取り組み
分野ごとの取り組みは以下の通りです。
- スマートものづくり
「技術力や現場力を生かしたスマートものづくり実現に向け、国際標準等の基盤整備や、受発注・設計・生産及び産業保安等のデータ共有の先進事例創出を支援。」
いわゆるIoTを活用した「スマート工場」実現化に向け、国はこのような取り組みが行われています。特にものづくりに深く関わる製造業を中心とした取り組みです。 - 自動走行
「自動車産業の競争力維持のため、自動走行の事業化(社会システムの設計=地域実証等)と技術(協調領域最大化=高精度地図等)で世界最先端を目指す。」
日本で社会問題にもなっている車の運転。その最先端技術として注目されているのが「自動走行」です。自動車産業では自動走行に向けた競争も激しく、そこに対する取り組みが行われています。 - ロボット、ドローン
「世界屈指のロボット大国として、ロボットに係る要素技術の研究開発や人材育成を進め、ものづくり・サービス、介護、インフラ点検等の分野で実装を加速。」
ロボットやドローンの社会への導入が遅れがちな日本。しかし技術力はすさまじく、どのように実装していくかが課題です。そこで国は、IoTを利用したこれらの実装を加速するための取り組みも行っています。 - バイオ、ヘルスケア
「デジタル技術の「次」を見据えたバイオとデジタルの融合による社会に優しい産業構造への転換と、健康・医療情報を活用したサービス・機器等の開発支援。」
ただ技術力の向上だけを見据えるのではなく、バイオを融合した優しい社会への取り組みも施策の一つです。地球や社会に根ざした、デジタル・ヘルスケアへの開発支援も行われています。
「横断的」な取り組み
- データ活用
「CIにおけるデータ活用の基盤として、公的データのオープン化、産業・個人データの流通・利活用の促進、国際的なデータ流通の円滑化を推進。」
データとヒトやモノをつなげるConnected Industriesを促進するため、公的データのオープン化や利用の促進も取り組みの一つです。 - IT人材育成
「CIの担い手創出に向けて、教育訓練講座の拡充、プログラミング教育必修化、IT分野の起業支援プログラムの創設を実施。」
社会全体でIT化が進む中で、Connected Industriesの取り組みを理解した担い手を作ることも課題の一つです。そのためIT分野の教育充実も取り組まれています。 - サイバーセキュリティ
「CIに不可欠なサイバーセキュリティ対策を万全にするため、インシデント情報等の共有の仕組みの構築、人材育成、サイバーセキュリティ投資促進を実施。」
インターネット化、デジタル化には、十分なセキュリティ対策が必須です。情報漏洩などで活用が妨げられないために、サイバーセキュリティへの投資促進も行われています。 - 人工知能研究
「CIによる「勝ち筋」を確かなものとするため、産総研が大学等との連携の下、生産性向上等に資する研究開発を実施するとともに、グローバル連携を強化。」
Connected Industriesにおいて、しっかりとした勝ち筋がなければ意味がありません。そのため、国全体で勝ち筋を見出すための研究開発や連携も強化し行われています。 - 知財・標準制度
「CIに対応したルールの高度化として、ハードとソフトの融合に対応したルール整備、標準の実施に必要な知財の円滑な活用のための環境整備等を進める。」
Connected Industriesにおいて、協調や協働が無法地帯とならないためのルール作りも取り組みの一つです。これにより、円滑な活用へつなげています。
Connected Industriesの具体例
意味や取り組みを確認しても、馴染みがなく分かりにくいという人も多いでしょう。ここでは、「ものづくり」を行ういわゆる製造業に焦点をあて具体例をご紹介します。
- 「人×人」の場合
Connected Industriesで人と人との協調は、知識と技能の伝承がメインです。つまりものづくりの知識や、培ってきた技術を次の世代につなげることといえます。
ものづくりにおいて、機械の操作方法だけが技術ではありません。長年の経験やカンに基づく「匠」の技術。これを継承することがConnected Industriesにおける「人×人」の具体例です。 - 「人間×機械、システム」の場合
IoTの導入やデータの活用により、生産性を向上することが人間と機械、システムの関りです。具体的には、機器をインターネットにつなぎ情報を共有することで、無駄な労働時間を削減すること。また、デジタル化を促進し、必要な人員のみを配置することを指します。
一見難しく感じるConnected Industriesも、身近な具体例に置き換えるとそこまで複雑ではありません。中小企業では今までの価値観を大事にしながらも、このような新しい考え方を取り入れることで新しい創造を行っていくことが重要といえます。
Connected Industriesにおける中小企業のメリット
いくら素晴らしい取り組みであっても、メリットがなければ取り入れることは難しいです。ではConnected Industriesを取り入れることで、中小企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。国の挙げる、中小企業のメリットについて確認していきます。
- 人手不足を解消、働き方改革につながる
「IoT、ロボット等の導入で生産性を向上させたり、単純作業や重労働を省力化し、労務費を削減。テレワークともあいまって、若者、女性、高齢者が働きやすくなる。」
中小企業では問題になりやすい人手不足。しかしIoTやロボットで行えることに人員を割く必要がなくなり、人手不足の解消につながります。またデジタル化でテレワークの導入も進み、誰でも働きやすい環境を整えることが可能です。 - 次の世代に技術を伝承できる
「人工知能等によって「匠の技」を見える化し、若い職員のスキル習得を支援。」
今まで人から人へ伝えにくかった技術も、人工知能やネットワークを活用し伝承していくことができます。これにより次の世代も、分かりやすくスキルを習得することが可能です。
- 利益を上げられる
「職人の技能や創造性をデータ化し、それを生産設備につなぐことで、多品種・単品・短納期加工を実現。新規顧客を獲得。」
今まで関わりの無かった顧客獲得につながり、利益が上がる可能性も。時間のかかっていた作業も効率化し、生産スピードが上がります。 - 社会的な問題の解決につながる
「過疎地での高齢者の移動、遠隔地への荷物配送が可能に。歳をとってもクルマを安全に運転。将来的には、運転できない人も自動運転で目的地へ。」
社会問題ともなっている車の運転や事故。これらに対し自動走行の開発で、社会問題解決へつなげることも望めます。また車が必要な高齢者に対する支援を行い、車がなくとも問題のない社会へ変えていくことが可能です。
まとめ
中小企業が主役となって取り組む「Connected Industries」。これからの時代、IoTを導入したConnected Industriesは必須となってくるでしょう。しかし苦手意識を持つことで、導入が遅れている企業も多いのではないでしょうか。まずはIoTやConnected Industriesがどのようなものか知り、意識を変えていくことから始めてみてください。