電化製品や家具など、身の回りにある様々なモノとインターネットを接続して相互通信を行う仕組みIoT(モノのインターネット)。IoTの普及や活用の中で注目を集めている技術が「デジタルツイン」です。デジタルツインは、現実のモノやデータを仮想空間に作り上げシミュレーションする事で、従来のシミュレーションよりも高い結果を得ることができます。そこで、デジタルツインとはなにかを解説します。

 

loTとは?

IoTとは、Internet of Thingsの略で、パソコンやスマホなどの通信機器に限らず、身の回りに存在する全てのモノとインターネットとを繋ぐことをいいます。

それぞれのモノからデータを収集でき、相互通信を行うことで「モノのインターネット」と訳されます。

 

モノや人の行動、自然現象は多くの情報を生み出しています。これらの情報を収集して正確なデータとして表示し可視化することができれば、業務の効率化や生産性の向上など、さまざまな問題が解決できるのです。

 

見聞きすること、触れることのできる物理的な情報はもちろん、自然現象や生物の行動、触れることができないモノの動きやモノの位置情報も数値化されて収集可能になります。「モノのインターネット」の“モノ”は、これを意味します。

 

近年のIoT技術の発展は、製造業に大きな影響を与えています。

さまざまなモノがインターネットで繋がり、データが収集されているのです。

 

デジタルツインとは?

デジタルツインとは、Digital Twinの略で、「デジタルの双子」を意味しています。

双子とは、物理世界とそれに相似した仮想空間のことで、仮想空間に物理世界のデータをリアルタイムで連動し、コピー作成することをいいます。

 

従来は物理世界の情報をデータ化するための作業で人の手が必要であり、その負担が大きかったため、仮想空間に物理世界をそのまま再現することは難しいものでした。

 

しかし、IoTが普及することでデータを収集し続けることが可能になり、実現できるようになったのです。

物理世界のデータを仮想空間に運用すれば、モノの稼働状況や状態といったさまざまな情報が常に仮想空間上に反映されます。

 

そのため、リアルタイムで製品や機器、工場などの変化に対応し、収集したデータを用いてメンテナンスや設備保全、危険を事前に予測したり回避したりすることが可能になります。

このような特徴から、デジタルツインへの注目は高まり続けているのです。

デジタルツインと一般的なシミュレーションとの違いは?

デジタルツインの大きな特徴は、高い結果を得る事が出来るシミュレーションにあります。

デジタルツインはIoTの普及と発展によって注目を集め始めた技術ですが、一般的なシミュレーションとはどのような違いがあるのでしょうか。

 

従来、仮想空間に物理世界のモノを作り出す場合には人の手によって現実世界で起きた変化を入出力する事が必至であったため、時間の経過とともに物理世界のモノと、仮想空間のモノがかけ離れていくものでした。

しかし、IoTにより現実世界のデータが収集され、ネットワークを通じリアルタイムで仮想空間に反映することで、物理世界のモノと、仮想空間のモノの同一性を保てるようになったのです。

 

一般的なシミュレーションシステムでは、理想的な設計仕様に基づいてテストすることができますが、製造段階や工場から出荷された後の、実際に使用されて摩耗した状態の情報収集は容易に出来ることではありません。

 

デジタルツインでは、設計段階の製品だけではなく、製造段階、出荷後においてもデータの収集と解析ができます。

そのため、保全やメンテナンス頻度などについてより高い結果を得ることができ、問題が起きる前に作業を停止させることも可能になるのです。

 

モノづくりの現場では、デジタルツインを作り上げることによる製品の設計や開発段階でのシミュレーションだけでなく、生産工程効率化の分析や、問題が発見された場合の解決方法までもが仮想空間で管理できる体制が整えられてきました。

 

物理世界のデータを運用して仮想空間で再現、シミュレーションすることは新しい試みではありません。

デジタルツインと一般的なシミュレーションとの違いは、物理世界での変化を「リアルタイム」で再現し「連動している」ところにあるのです。

デジタルツインのメリット

不具合やエラーに対するメンテナンス、保全の質を向上させることが期待できます。

リアルタイムのデータを仮想空間に反映させていることで、問題箇所の特定だけではなく、設計上の問題や使用状態のデータも詳細に取得できるようになっているためです。

一般的なシミュレーションでは出荷後のデータを収集するのは時間がかかったり、不可能であったりしますが、デジタルツインなら製品製造から出荷、市場に投入されてから姿を消すまでの流れを追跡して把握できるため、メンテナンスが容易になる可能性が高くなります。

 

また、物理上の規制を無視できます。

工場の内に新しい設備を取り入れる場合、従来ならすでにさまざまな設備がある工場の空きスペースを確認しながら、新しい設備が入るのかを確認する必要がありました。

デジタルツインを導入すれば現状の制約を一旦無視し、新しい設備を取り入れた時の工場内の最適な配置を仮想空間上で簡単に確認することができるようになるのです。

 

さらに、コストを削減することができます。

デジタルツインは、仮想空間に物理世界と同じものを作り出すので、これまで実際に行っていた試作や検討にかかっていたコストを削減することができます。

実際に製造するよりも安く済むので、試作を重ねることでコスト削減に大きく貢献することができます。

メンテナンスもデータを収集して分析することで適切に行うことができるようになり、その結果、過剰だったメンテナンスにかかっていたコストも削減することができるのです。

まとめ

デジタルツインはIoTの進展により、物理世界と仮想空間がリアルタイムで連携できるようになりました。そのため「双子」といえるほど近い仮想空間を作り出せるようになったのです。そしてその「双子」を活用することが、これからの時代に大きな価値を生み出すのだといえるのです。